毛皮のヴィーナス(2013年・フランス)LA VENUS A LA FOURRURE/VENUS IN FUR

ジャンル 心理ドラマ/エロス/恋愛/演劇
監督   ロマン・ポランスキー
脚本   デヴィッド・アイヴス
出演   エマニュエル・セニエ、マチュー・アマルリック

↑ コッチじゃなくて……(これはまだ観ていませんが、観たい)
↓コッチです。今回ご紹介したいのはこちら、ポランスキー監督・ヒロインはエマニュエル・セニエのほう。

レンタルDVDに入ってる予告編を観て、なんとなく興味を惹かれてレンタルしたんですけど……
これは観てよかった映画になりました。
【どんな映画か】
レビューを書くのが難しい映画でもありましたが……
言うなれば、
「演じているうちにその気になっていく心理」
でしょうか。
SM・サディズムとマゾヒズムの語源になったのは、Sがマルキ・ド・サド、Mがマゾッホ。
どちらも読んだことはないんですが、「毛皮のヴィーナス」という小説があることは知っていました。
エロ小説ではなく、文学であるらしいことも。
でも、読みにくい耽美小説なんじゃないかなと勝手に思っていて、実際に手に取らなかった。
今回、映画を観てから原作「毛皮のヴィーナス」について調べてみたら、
意外なことにけっこう短編らしいです。
それなら読んでみてもいいかな。

映画は「毛皮のヴィーナス」を原案として脚本・演出を手がける男とオーディションに来た女優の2人芝居です。
まさに、2人だけの芝居。
ろくに舞台装置もない中、そのへんにある前の芝居の小道具を2人で動かしたり、
ライトを調節したり、「ここはこんな風にやったほうがいい」とか議論しながら、
演出家が主人公の男の役を演じて女優のオーディション~いつのまにか通し稽古みたいな展開になります。
演じている人物と、実際の人物は、最初はまったく別物。
演じている途中でも地の会話があったり、電話がかかってきて中断されたりします。
それなのに、じわじわと、劇中の人物がリアルの人物を支配していく…
【みどころ】
オーディションに遅刻してきて泣いていた安っぽい女優が、
役になりきった途端に、気高い貴婦人に変わります。
あれは本当にみごとだった。
立ち方や動作、表情、しぐさだけで、人間はこんなにも違って見えるものなのかと……
エマニュエル・セニエは美人ではないと思いますが、ものすごい演技力がある魅力的な女優です。
今回の映画で初めて知りましたが。
毛皮のヴィーナス
画像引用元
そして、主人公を演じる演出家を演じる(あえてややこしい書き方しています。だってそういう映画だから)マチュー・アマルリック。
この俳優の表情の演技もすごい。
オーバーな演技ではなく、むしろ静かな変化なんですけど……
屈辱を与えられて歓喜する、って、言葉で聞いてもよくわからない感覚なんですけど、
マチュー・アマルリックの表現を観ると、なんだかわかってしまう。
虐げられているのに、なんて嬉しそうなんだ……!
虐げるといっても、この映画には暴力的なシーンはほとんど出てきません。
精神的な屈辱なんだけど、ちょっと逆らったことを口にして叱られた時の彼の
「お許し下さい」
と言う時の顔が……
ヨロコビに輝いてるんですよ!
あんな顔されるんならいじめてみたくもなる(笑)
マチュー・アマルリックも、特別イケメンというわけではないです。
背も大きくないし(ヒールをはいた女優より頭ひとつ低い)、若くもない。
演じる人によっては、かなり気持ち悪くもなるかもしれない役ですが、
繊細で神経質で理想主義なアーティストという、とてもピュアなキャラクターにふさわしい彼が演じると、
マゾ男がとても精神的で美しい存在に見えてしまいます。
マチュー・アマルリック
画像引用元
劇中の人物を演じている時の、ふたりのしぐさの美しさにはしびれました。
小道具がないのに、手の動きだけで、完璧に表現するんですよ!
スゴイ。
落語家もそういうのが得意だけど、フランス人もすごいんだなあと思いました。
そういえばパントマイムの伝統もありますよね、フランスには。
エレガントな手の動かし方、かろやかで繊細。
エロシーンは出てきません。
まったく出てきません。
(おっぱいポロリはありますが)


予告編では扇情的な切り取り方をして見せているけど、すべては美しい流れの中では自然でした。
靴をはいた爪先に口付けるとか、首輪にリードつけて引き回されるとかも、
いきなりそんなシーンを観ると「何がいいんだかわからない異常な世界」ですが、
映画を観ているうちに、それも美しい必然だとわかってしまうという……
感動したんだけど、レビューにどう書けばいいんだろうと悩んで、
数日、なにも書けなかったんですが…
けっこう書くことがありました。
たぶん、いろいろと未知なことを感じすぎて、混乱していたんでしょう。
【ポランスキー監督】

監督のポランスキーも、名前だけは知っていたので有名な人なんだと思います。
が、今回の映画しか観ていないので、監督については何も語れません。
今後、監督名で映画を探してみようと思える人であることだけは言えますが。
キネマ旬報 2015年 1月 1日号にもレビューがあるようです。

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